暗号界と距離を置く
May 20th,
2020
暗号界と距離を置く
カジノ・ライセンス
各国でクリプトーエクスチェンジ事業者は、顧客を投機の場へと誘導して日々のトレーディングを促し、そこでの手数料収益最大化を第一の目的としている。
クリプトーエクスチェンジ事業者は、顧客がトレーディングのために世界中から持ち込む暗号資産を出所確認なしに無制限に受け入れている。互いに面識のないユーザー間でこのような資産を「安全」に取引させるには、高い透明性と厳密な安全対策が求められる。
我が国の規制当局は、その制度の目的を「1.マネーロンダリング対策、2.利用者保護」と定めている。よって事業登録には、その準備や運営体制の整備に高額な費用が伴うことは容易に理解できる。
高いセキュリティ性を有すシステムやサーバー、それへの維持・管理体制を整えるのは銀行と同等か、それ以上のものが要求されてもおかしくない。さらに、それはデジタル面に留まることなく、機器の設置場所にも当局の関心は向く。
数十億、数百億円単位の価値がある資産を預かるのだから、外部からの物理的な侵入を防ぐことのできる部屋や建物の中に、世界最高水準のセキュリティ性を有すデータセンター、オフラインディバイス等を保管する金庫などを設置し、さらにそれらを地震や火災はもとより、津波等の自然災害からも守る設備・体制が望まれる。
こうしたコストを賄うため、我が国ではそれに見合う多額のトレーディング手数料を稼ぎ出すか、何らかの目的を持った「パトロン」に経済支援を得るほか、持続可能な事業体制を維持することが容易ではない。
行き着くところ、クリプトーカーレンシーは「データ」に過ぎず、実用を伴わなければ本来いかなる価値もない。カーレンシー、つまり「通貨」とは名ばかりで、公的に通貨として認められているものはどこにも見当たらない。また、証券性が疑われながらも、各国で証券として合法なものは一つとして存在しないのが現実だ。
こうしたことをよそに、値上がり、差金取引等、元手を増やすことに終始し、それを第一の目的に「データ」をトレーディングさせるエクスチェンジは、ギャンブルカジノ施設と極めて近い性質にあることが伺える。単純な見方をすれば、バーチャルか否かを除けば、パチンコ玉やスロットの代わりにデータを用いたカジノであり、クリプトーライセンス(事業登録)は事実上の「カジノライセンス」と言えそうである。
※本文において「カジノ、ギャンブル」とは、クリプトーエクスチェンジが提供するトレーディング環境に対する比喩であり、オンラインおよびブロックチェーン上で、合法に展開しているゲーミング、ギャンブリングアプリを指すものではありません。
失われた10年
世界のクリプトーエクスチェンジが、そうしたカジノサービスに終始する一方、オリジナルビットコイン(現ビットコインSV、以下ビットコインまたはBSV)が目指す世界は全く別の次元に存在する。
サトシ・ナカモト著、論文「ビットコイン」では、ビットコインをピアツーピア電子キャッシュと定義し、「使う」ことを目的に開発されたことが文中随所に伺える。
もちろん、キャッシュ使用とは買い物やサービス、またデータ送信等への使用であり、それらは到底、賄賂の授受、犯罪利用などではない。
さらに論文中、「価値の保存、デジタルゴールド、ただ保有し続ける」などと言った記述は一切なく、暗号界が情熱を注ぐ「暗号化(クリプトグラフィ)」については、その解釈が大きく歪曲化されてきた。
同論文発表以降、ある時点において投機家や非合法なギャンブラー、犯罪者の興味を引き、またそうしたことを支持する活動家や開発者らがサトシを公然と否定し始めた。「ビットコインは電子キャッシュではない。当局の手が届かない暗号通貨、つまりデジタルゴールドである」などの誤認識がソーシャルメディア等を通じて拡散され、不運にもそれが各国で一部の「反政府心」をくすぶり資金流入を誘った。
その後、ビットコイン創生の目的である商業利用を推進する発明者側と、反政府主義でアノニマス利用を支持するグループとで対立が続いた結果、ビットコインはここまでに二度の分岐(フォーク)を余儀なくされた。
その際、クリプトーエクスチェンジもまた、アノニマス側の支持に回り、アノニマス性が追加された新プロトコルへ、ビットコインが投機利用され始めた当初からのトレーディングシンボルを継承させている。
ビットコインの表記に関しては、サトシ・ナカモトは当初より「Bit CoinおよびBC」などとしていた。しかし、ある時点において投機グループがそのトレーディングに対する熱意からか、「T」を加え現在にいたるようである。
こうして、本来、最も重要であった「コマーシャルユース」に向けた開発が大きく遅れた経緯がある。ビットコインはまさに「失われた10年(または11年)」を経験し、オリジナルプロトコルを継承しつつも、取引シンボルは二度に渡って変更を受けるにいたった。
次世代クラウド、次世代アプリの出現
しかし2020年2月、ついにオリジナルビットコインはそのベースプロトコルを完全に復元し、固定することに成功した。それはまた、未来永劫いかなる者も変更を加えることのできないプロトコル、つまり、全人類共有の「改ざん不可能な記録システム」の基盤が完成した歴史的瞬間でもあった。
そして現在、ビットコインが持つ可能性、それへの期待を持ち続けた世界の人々によって、オリジナルビットコインを基盤にした次世代アプリ、次世代クラウドサービス、次世代インターネットの開発が急ピッチで進んでいる。
※技術的にはハッキング可能も、それには膨大なコストを要し、ハッキングの成功とともにコインの価値がなくなるため、そうすることへの経済的インセンティブが存在せず、ハッキングは起こらないというのがコンセンサス。
※一部、語彙、表現を編集しました。